【書評】『人のために頑張りすぎて疲れた時に読む本』根本裕幸

年末にふと買ったらめちゃめちゃよかった心の持ち方を変える本

年末に信頼している本屋さんで「僕らの冒険には本が必要だ」という大和書房のキャンペーンが行われていた。その本屋さんは本当に選書のチョイスが素敵で、間違っても「嫌韓」「愛される女は男に尽くす」「30日でガンが治る」のような、歪んだperspectiveを押し付けてくるような本は絶対においてない。この本屋さんが推している本は信頼できるな〜年末に軽く読めるような本はないかな〜と思っていたら出会った『人のために頑張りすぎて疲れた時に読む本』。パラパラ〜っとめくっただけで、半分以上が<どうすれば疲れずに自分軸で生きられるのか?>という問いに立ち向かうために、具体的なワークが書かれており、実践的な内容の本、好き!と思い購入。予想通り、すごくいい本だった!

 

人のために頑張りすぎて疲れた時に読む本

人のために頑張りすぎて疲れた時に読む本

  • 作者:根本裕幸
  • 発売日: 2019/01/18
  • メディア: Kindle版
 

第1章:「私ばっかり損してる!」のは、「お察し力」のせい

まず初めに、この本を手に取った人は「お察し力」が高いために、自分ばかり損をしているように感じること、どうしてわかってもらえないのかと悲しい思いを抱える可能性が高いと言っている。事例として出てくるのは、実際にカウンセリングを受けにきた人なのでなかなか追い詰められた方々なんだろうけど、自分でも思い当たる部分が多々ある…。相手のためを思って「忙しいから会わなくても平気だよ」と彼氏に言ったのに、伝わらなくて悲しい思いをしたり、忙しいだろうからと思って手伝ったら「そのやり方だめ、もう手を出すな」と言われて自分を責めたり。相手を想ってやったことなのに、それを受け取ってもらえないのは悲しいよね、辛かったよね、ということを初めにきちんと認めて、承認してくれる。うう、優しい作者だ…。全体を通じて、このような優しい目線で、読者を随所で承認してくれるので、自責の念が強いタイプの読者(おそらくこの本の想定読者層)も安心して先を読み進めることができる。

第2章:「他人第一」をやめて、自分をすり減らさない

次の章では、他人の気持ちを感じ取りやすいからこそ「他人第一」になってしまいがちな性質の人が、自分をすり減らさないために「自分軸」で生きていくことの重要性をとく。
この章でハッとしたのは、

「お察し上手」な人は、もともと「自分軸」で行動ができる自立した人ばかりです。ただし、はじめは主体的に相手の気持ちを察して行動していたはずが、相手がそれに気づいてくれなかったり、感謝してくれなかったり……あるいは、そこで調子に乗った態度を取ったりしてくると、不満や不信感が募ってくるものです。これは、自立の影に隠れていた依存が顔を覗かせた状態で「自立の依存」という問題になります。(p.80)

という部分。
ちょっと難しいので、自分なりの言葉で理解すると、人間は他人との関係性において「自立」と「依存」という2つの状態がある。もともと察する能力が高い人は、察した情報をもとに自分が何をすればいいか?ということを考えられる、「自立」した状態の人。(逆に言えば、「依存」状態の人は、察することができたとしてもその情報をどうすればいいかわからず行動を取らない、もしくはその時点で他人に助けを求めるので疲れない。)しかし、「自立」の状態の人も、自分が良かれと思ってやったことに対して、相手が気づかない、当たり前のように受け取る、ましてや文句まで言いだりたりすりゃあ「せっかくやってあげたのに何よ!」となり、自発的に行ったはずの自分の行動に対して見返りを求めるようになってしまう。この状態を「自立の依存」と呼ぶ、ということだと理解した。

第3章:人のために頑張りすぎない「自分軸」構築ワーク

第4章:自分の気持ちを優先できる伝え方

 なるほど、自分が疲れちゃう理由はわかった、じゃあどうすればいい?ということがこの後の3章、4章で書かれている。こういう本って「君は悪くないよ!元気出せ!」で終わり、根本的な解決まで至らない消化不良の本が多いので、半分以上をワークに取ってくれているこの本は、とても読者に誠実な本だと思う。おそらく、著者がカウンセラーだからこそ、具体的にどのようなワークをすればいいか?という解決まで導くことをプロとして長年やっているからできることだと思う。
この章では、他人軸になりがちな人が自分軸で生きるために、どのように強い「自分軸」を作り上げていけばいいかということが書かれている。たくさんワークがあるので、自分がやってみたいなと思うものからスタートすればいいんだと思う。私がすぐに始めたのは
・「人の迷惑顧みず」とつぶやく(潜在意識に働きかける)
・「課長は課長、私は私」など、相手との精神的な距離が近くなりすぎたなと思うたびにつぶやいて、相手との適切な距離をとる(相手との癒着をはがす)

今後やってみたいのは、自分の価値を改めて認めてあげたり、自分に優しくしたりする自己承認ワーク
・1日5個自分を褒める
・年齢×10個やりたいことを書き出す

第5章:「いま、とっても幸せ!」と気づく

最後に著者は、全ての人は愛されるに値する人間であり、どうか自信を認めてあげてね。と背中を教えてくれる。うう、ありがとうございます、頑張ります(泣いてる)
この章で紹介されていたワークでやってみたいのは
・自分を愛してくれた人に感謝の手紙を書く
私のことを愛してくれたからいなくなっちゃった彼、しばらくは「私に欠けている部分があったらかいなくなっちゃったんだ」と思い込んでたけど、そうじゃなく愛してくれていたからこそ身を引いてくれたんだね、あなたの愛を受け止めて前に進むね、と認識した方が、人生が楽になる。現実に当時の彼が何を思って別れを選んだのかは今ではわからないけど、私の人生は私の知覚だけにより構成されているんだから、説得力のある論の中で、なるべく幸せな選択肢を選んで人生を編んでいきたい。

疲れなくなる考え方を身につけるためのワークまで書かれた稀有な本

いや〜〜〜いい本に出会えた!『人のために頑張りすぎて疲れた時に読む本』は、気を使いすぎ、相手の感情の先読みをしすぎて空回りしてしまう人にとって、必要な本。
私も、自己主張が下手で、自分の感情よりも他人の顔色や「この人、これがやりたいんだろうな」と思っていることを感じすぎてしまうタイプ。でも他人軸になりすぎなことはわかるし、自分軸で物事を感じ、考え、行動した方がいいんだろうなとアタマでわかっていても、2、3日もすると気がつかないうちに他人がなにを考えているのかを先回りして読み取って、自分の主張が弱くなってしまう…という空回りを繰り返していた。「他人の気持ちを読み取る能力」が仕事やプライベートで役に立つことが多いからこそ、そんな自分の長所は捨てたくない。でも「相手の気持ちを感じすぎて自分がなくなる」という短所は克服したい…という悩みを、優しく受け止め、前に進む力を与えてくれる本。そのケがあるな、と少しでも思う人は読んでみてほしいです。