『Oh William!』 by Elizabeth Strout

前にブログにも書いた、エリザベス・ストラウトのルーシーシリーズの新作が発売されていたことに、ある読書ブログをみて気がついた。久しぶりの洋書Readingだったので読み切れるか心配だったけれど、ちょうど英語の勉強を本気でやり直し始めたところだったので読んでみたところ、面白くて二日で読了した。

シリーズの第1作目となる『私の名前はルーシー・バートン』は、ルーシー本人と彼女の母親の話。2作目の『何があってもおかしくない/Anything is possible』は、ルーシーの家族やAmgashの地域の人々の話。そして今作の『Oh William!』は、ルーシーの最初の夫、ウィリアムとその母Catherineの話。

この話は最後のページに書かれていたように「私たちがいかに他人や自分自身のことすら知らないか」という話だ。と思う。

家族と一緒にいる時に感じる安心感、安定感、それは何に端を発するものなのか?その幻想が崩れた時に何が残るのか?

ウィリアムに”Authority”を感じて、それゆえに「彼がいるところが自分の家だ」と感じていたルーシー。そしてそのAuthorityは、自分にとって(大学生の時に出会った)彼がいろいろなことを教えてくれる人だったからであり、自分とは違う出自から来た「彼は世界を知っている」という盲目の信頼感からきている。そして、その母親、ルーシーのことを”She is from nothing.”と友人に紹介していた義理の母Catherineは、前の夫の元からウィリアムの父親と駆け落ちする際に、娘を置いていった。そして彼女は信じられない貧困家庭で育ったことが明らかになったら、それでもルーシーの信じていた、彼女の世界は今までのままだろうか?

いや、彼女の世界は大きく変わる。それでも、彼女はその世界で生きていく。

まだどのようにこの話を消化すればいいのか落とし込みきれていないが、面白かった。ルーシーが年齢を重ねても、自分について発見していく過程、他人に対する深い洞察、そして世界に対しての洞察に満ちた美しい文章は、いつまでも読んでいたいような、夢とうつつの間のような美しい文章だった。

 

近く、秋に新作が出るようなので、楽しみにしている。

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