『川っぺりムコリッタ』

『かもめ食堂』『めがね』など、のんびりとした空気感と美味しい食事風景と人間の可笑しさを描く、荻上直子監督の最新作『川っぺりムコリッタ』をみてきた。

 

kawa-movie.jp

 

最近映画を全然チェックしてなかったから、最新作が公開されることを全く知らなかったんだけど、たまたま「なんか映画やってないかな〜ん」と映画館のウェブサイトを見たら、ちょうど公開日でびっくり。早速見てきた。

今回のテーマは、生きているということと死んでいるということ、小さな幸せを積み上げていくこと、家族じゃなくても小さな幸せや日常をシェアできること、かな。

松山ケンイチが演じる山田は、ほぼ無一文で塩辛工場で働いている。ある日、ムロツヨシ演じる島田が「風呂貸して」と訪ねてきて…という話。

見ている間中、ところどころ、恐ろしいな、と思った。どうしてだろう、いままでの「かもめ食堂」や「めがね」のように、心からのんびりできず、恐怖を感じた映画だった。きっと、登場人物たちが生と死の狭間で生きている人たちだから、じわじわと自分が死に引かれるような気がして怖かった。

山田は、父親の死を通じ、自分もろくでもなく死ぬのではないかと恐怖している。島田は、子供の死を乗り越えることができずにいる。墓石を子供と売り歩く溝口は「いのちの電話」に助けを求めている。溝口の息子は、いつか繋がると思って壊れた電話を見つめている。大家は癌で死んだ夫を愛し続けているし、夫の娘は宇宙人と交信しようとしている。みんな、死と隣り合わせ、むしろ、少しだけ死と重なり合う場所に生きて、少しおかしくなっている。でも、それって映画を見ている私たちもそうだよね?と語りかけられている。

いままでの作品よりも死が身近にあることを感じさせられる映画だった。さらに、平日の午前中という年配の方々が多い映画館で見たからか、面白いクスッと笑ってしまうところがあっても「それでも人は死ぬんでしょう?」と背後から囁かれているようで怖かった。きっといまの自分の心の状況によって見える景色が全然違うんだろう。

印象に残ったシーンは、島田が「俺も連れてってくれ」というシーン。ここではない、どこかへ、自分も連れていって欲しいと願う気持ちは、いつも私の隣にもいる。

それでも、塩辛工場の社長が言っていたことは、私を救ってくれる。「(日常を繰り返すことに)意味はある。でも、それは5年、10年続けた人にしか見えないんだ。」「手を動かせ!」と主人公に発破をかけるシーンは、私の背中を確実に教えてくれる。

明日も頑張るか。