2020年面白かった本①

今年読んで面白かった本。第一弾は社会との向き合い方、社会の見つめ方を少し変えてくれた2冊。

 

 『居るのはつらいよ』 東畑開人

京大を出て臨床心理士となった著者が「ケア」でなく「セラピー」に拘って沖縄に辿り着き、紆余曲折を経て、「ケア」と「セラピー」のあり方について、そして現代社会の在り方について、独自の視点で論じている本。というと堅苦しいけれど、著者の東畑さんの書き口がめちゃめちゃ面白く、楽しみながらよめる。ただ、著者が辿り着いた「ケア」と「セラピー」の関係性、そしてその根幹にある現代社会(資本主義)の在り方とその負の面は衝撃的。そして改めて自分の価値観を見つめてみると、現代社会のあり方はしっかりと私にも内面化されている。人々の価値観は絶対的ではなく、私が正しいと思っている自分の価値観ですら、社会によって作り上げられたもの。それでは、私が本当に正しいと思っているものは何なのか?スッキリしないからこそ、ずっと心に残っている。社会的に「正しい」ものに流されそうになった時に読み返すと思う。

 『自分と他人の許し方、あるいは愛し方』 三砂ちづる

ミシマ社のウェブ連載が書籍化されたもの。連載は知らずにたまたま購入したが、著者の慈愛と励ましを感じられる素敵な本だった。

「魔がさした」という言い方をすることがあるんだけれど、「魔」ってなんだろう。(中略)「魔の正体は、自己憐憫と罪悪感」です。 

そう、魔がさす時ってある。とても天気が良い日にお気に入りの服を着てカフェで友達を待ってるのにどうしようもなく悲しくなってしまう時とか、家族からの連絡が鬱陶しくてたまらなくて、ああもう消えてしまいたいなあってぼんやり思う日曜の昼下がりとか。そんなとき、この本を読めば少し落ち着ける。私はいま「魔」に捕らえられているけれど、正体は分かっている。自己憐憫と罪悪感。それらと闘い、自分を許し、愛そう。そう思える、素敵な本だった。定期的に読み返すと思う。精神安定剤的な本になりそう。

自分と他人の許し方、あるいは愛し方

自分と他人の許し方、あるいは愛し方

  • 作者:三砂ちづる
  • 発売日: 2020/05/23
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

 

コロナで外出が自粛されるようになってから、びっくりするくらい本を読んでいる。もともと本を読むのは好きだったけれど、ここ数年は自分の好きな作家さんの本+年末年始の積読本3冊くらいで、1年で計10冊も買っていなかったのではなかろうか。

ところが、今パッと本棚を見ただけでも今年の4月から購入した本は優に30冊を超える。コロナが人々に与えた影響は色々あり、現在進行形で様々な変化が進んでいるが、私にとっては内省の時間が取れるようになったことが一番の大きな変化だ。内省とは、「自分自身の心の働きや状態を省みること」らしい。strength finderで「内省」「慎重さ」「収集心」「学習欲」「共感性」をもつ私は、このコロナ禍で時間ができたことで、自分の心を以前よりも頻繁に覗き込むようになり、その心の状態を先人たちがいかなる言葉で表現してきたかを学ぶためにたくさんの本を読んでいるらしい。

もちろんそれだけではなく、家族の入院手術、自分自身の仕事の変化に伴って購入した学習のための本もたくさんあるが、それらも結局は自分の心を省みる時間がなかったら手に取らなかっただろう。

コロナ禍で大変な思いをしている方々はたくさんいるし、自分自身も気を引き締めて生活してなければと思うが、私にとって家で一人で過ごす時間が肯定される時代は、なかなか生きやすい。上記の2冊は、ともすれば大きな声に流されそうになり、社会の荒波であっぷあっぷしていた私の道標となってくれた2冊。